専業主婦から専門職にチャレンジ

Sさん(都内区部在住)

40代。子育て中に取得した資格を生かして保育士として働きながら、さらに幼稚園教諭・社会福祉士の資格を取得。現在は相談支援の仕事に就く。はあと飯田橋では福祉職への応募に際し、小論文対策や応募書類作成について相談。中学生と小学生の2人のお子さんを育てている。

  

インタビュー

スタートは保育士  

資格取得を目指した経緯について教えてください。

 離婚前は夫が転勤族だったので、赴任先で働こうにも制約があり、専業主婦をしていました。しかし夫がうつ病を発症し、私への攻撃的な態度や買い物依存などの症状があらわれ、日々悩まされるようになりました。そんな中で将来のことを考えるうち、「やはり私も仕事を持っていなければ」という思いが強くなりました。ですが、現実的に資格がないと仕事も見つかりにくいだろう、資格があれば、日本のどこにいても働くことができるだろうと考えて、独学で保育士試験の勉強を始めました。

養成機関には行かず、独学だったのですね。なぜ保育士の資格を取ろうと考えたのですか?

 一時保育で子どもを預けた時、私が日頃言っても動かないのに、ひと言で子どもを動かす保育士さんを見て、自分の育児にも根拠というか、自信を持てるよう勉強したいという気持ちがありました。また、赴任先ではいわゆるワンオペ育児で、誰も頼れる人がいませんでした。「私のように育児で悩んでいる人の助けになりたい」ということもあって、保育士になろうと思いました。

独学での試験勉強は、大変ではなかったですか?

 学校に通うとお金がかかりますし、教科書を買って自分で勉強しました。子どもが小さかったので、1年目は半分の科目だけ勉強して。あとは過去問をインターネットで調べて、ひたすらやるくらいで。2年かけて試験に合格しました。実技試験がありますが、ピアノは小学生の頃に習ったきりだったので、試験前には友人からキーボードを借りて練習しました。

働き方とやりたい仕事を模索して

実際に保育士として働き始めたのは、いつごろですか?

 結局夫とは離婚したのですが、離婚成立と同じ頃、保育士試験に合格して資格証が届きました。ちょうど上の子が小学校に入学する年齢で、その年の4月、子どもの入学と同時に正社員の保育士として働き始めました。

専業主婦から、いきなり正社員!不安はなかったのですか。

 働く前には不安はなかったのですが、働き始めてみると子どもの病気など、仕事と家庭の両立が難しいと感じる場面が何度もありました。それで翌年からは、勤務に比較的自由の利くアルバイトの保育補助や、産休代替の職員として働きました。産休代替で入った保育園は、正規雇用の方と同じように年間を通しての研修にも参加できて、良かったですね。そのうち子どもたちも大きくなってきたので、また別の保育園で正社員の保育士として働きました。 

保育士として働きながら、幼稚園教諭の資格も取得されていますね。

 時限立法※で、保育士資格があれば幼稚園教諭の資格が取りやすくなったのですが、ちょうど要件の保育士実務3年をクリアしていた時期だったので、大学の通信制コースに申し込みました。働きながらレポート提出とスクーリングに取り組み、費用は貯蓄から出しました。 

※認定こども園制度施行5年間の特例、後に10年に延長。

保育士としてキャリアを重ねるなか、新たな資格を取ろうと考えたのは、なぜですか。

 保育士の仕事は好きですし、勉強にもなりましたが、どこの園にも園長や運営企業などの方針があります。正社員として3年勤めた園は「子どもにはのびのびと過ごさせたい」という私の思いには合わず、退職しました。その後も保育の仕事に就いたのですが、園の方針に合う・合わないということがある以上、保育士だけでは一人で自立して生きていくのにはちょっと…それに、いつか体力的にきつくなる。子どもたちも手がかからなくなってきたので「もう一度勉強したい、自分のやりたいことを見つけていきたい」と考えました。


 

働きながら資格を取る

そこで今度は、社会福祉士を目指したのですね。

 はい。保育士時代、保護者の方から色々な相談を受けたということもありますが、夫と離婚する前、夏の暑い日に子ども2人を連れて相談機関に行ったとき、対応してくれた方が、こちらが思ったことをそのまま言えない感じの人で。寄り添ってくれることもなく、暑い中を泣きながら帰ったことがあるんです。その頃からですね、「自分は、今の自分のように困っている人を助けたい、寄り添えるようになりたい」と思うようになったのは。

チャレンジのきっかけを、ぜひ教えてください。

 方針の違いで勤めていた保育園を辞めたとき、ハローワークで今後の相談をしたんですが、「専門実践教育訓練給付金※という制度がありますよ」と教えてもらって、「費用が6割※戻ってくるなら、じゃあやってみようかな」と。保育の仕事をしながら勉強するつもりだったので、通信制のコースを選びました。レポート提出とスクーリングの他、実習があるんですが、幸いその時の勤務先で休みをいただくことができて。障害者の方の就労支援施設へ1か月、実習に行きました。

※一定の条件を満たす雇用保険の被保険者等が、指定の訓練を修了した場合、支払った費用の一定の割合額が支給される制度。現在は、最大で受講費用の7割が支給される。(詳しくは住所を管轄するハローワークへ)

働きながら、また家事や育児もしながら、どうやって勉強の時間を作ったのでしょうか。

 とにかく集中ですね。当時は、後がないと思って本当にすごく集中してやっていました。子どもも受験生になるので、それまで持ち越せないぞ!と。(笑)

現在は支援の仕事に、そして今後は

改めてここまでの道のりを振り返ると、いかがですか。

 保育士資格を取る前の自分は、本当に真っ暗でした。あのとき助けがもらえていたら、あの時の自分を助けたい、という気持ちでやってきました。資格取得については、時限立法や専門実践教育訓練給付金の制度があって、後から考えればタイミングが良かったと思います。

はあと飯田橋では、福祉の仕事への転職を目指し「小論文対策」を受けられましたね。

 初めてはあと飯田橋に来たのは、保育園に勤めていた頃ですね。職場の悩みを相談しに来ました。その後、社会福祉士の資格を取ったので相談支援の仕事を探していたとき、応募に論文や作文が必要な求人が多かったので「小論文・作文対策」を受け、応募書類についてもアドバイスをもらいました。 

今後、取得したいと考えている資格はありますか。

 社会福祉士を軸に、今後はお金の使い方など、先々の見通しを立てた相談ができるよう、FPの資格とか……。元夫のこともあり、精神保健福祉士を取って精神的な病気についての知識を身に付けたり、患者の家族のケアもできるようになりたいですね。家族同士のつながりをつくる支援とか。

家族のこと、将来のこと

ご家族のことをお聞かせください。お子さんは男の子ですね。部活動は何かされていますか。

 2人とも野球をやっています。男の人が家にいないので、姿が見えた方がいいのかなと思って。サッカーでもよかったんですけど、地域のチームを見学に行って「こっちがいい」って。上の子は、高校に行っても野球を続けたいと言っています。

地域の野球チームは、お母さんの出番も多いですよね。

 お水やお茶を持って行ったり、一日つぶれることもあります。大変さもあるけれど、男の子を育てているからこういう経験もできるのかなと。子どもたち自身も、野球を続けたことで足が速くなり、本人の自信につながりました。頭も目も使いますし。ひとつのことを続けるって大切だな、と思います。 

思春期で、大人への反抗もある時期ですよね。お子さんへの接し方で、心がけていることはありますか。

 反抗はありますよ。言ってほしくない言葉を言われることもあります。でも家で、子どもはしゃべらなくても私は毎日仕事の話を「今日はこんなことがあった」と話しています。子どもたちが、働くことを楽しいことだと感じてほしいし、自立して働いていくために、今は学んだり、やりたいことを見つけていくときなんだと考えてほしいと思っています。

では、ご自身やご家族の将来のイメージを教えてください。

 家族それぞれが、それぞれのやりたいことをやりながら、3人一緒にいる、っていう感じですかね。

ありがとうございました。最後にひとこと、お願いします。

 最近は、今まで悩んだことや子育てや保育園での経験が全て無駄ではなかったことを痛感しています。一つの地域でも、たくさんの方が様々な悩みをお持ちです。一人一人の方が、ご自分の力で乗り越えられるように一緒に考えていきたいと思っています。

インタビューを終えて 

 小さなお子さんを抱えて、あるいは働きながら資格を取るのは難しいのでは…と思いますが、Sさんは独学や通信制のコースでコツコツと学び続け、専門職への道を切り拓いてこられました。
時間をやりくりしての勉強を後押ししたのは、「あの頃の自分を助けたかった」という強い思い。
目標に向かって努力し、夢を実現するお母さんの姿は、お子さんの胸にしっかりと残っていることでしょう。

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